今回はネモ船長の飛行機アルバトロス号について徹底的に解説します。
「ネモ船長の飛行機」という話は結構有名ですが、実はロクな情報が出回っていないこのアルバトロス号。
情報が少ないなりに色々と考察してみました。
アルバトロス号の原作
ミステリアスアイランドはジュールベルヌの作品をコンセプトにしたテーマポートです。
その代表的な作品を挙げると、地底を題材にした『地底旅行』(1864)、 海底を題材にした『海底二万里』(1870) などがありますね。
その中でもアルバトロス号について知るためには、『征服者ロビュール』(1886)という作品を紹介しなければならないでしょう。この作品に登場する飛行機の名前こそが「アルバトロス号」なのです。
『海底二万里』には動力潜水艦のノーチラス号が登場しますが、作品が発表された当時では動力潜水艦というものはまだまだ研究段階。 ですから完璧な機能を持ったノーチラス号は時代を先駆けた夢のような潜水艦でした。
同じように『征服者ロビュール』に登場する飛行機アルバトロス号も当時からするとかなり先進的でした。
当時の空を飛ぶ乗り物と言えば、気球を搭載した気球船です。
歴史上では様々な研究家によって「気球無しで空を飛ぶ飛行機」の試行が繰り返されてきましたが、未だに成功例はありませんでした。アルバトロス号はまさにその彼らが造ろうとした飛行機なのです。
人が何人も乗れるほども巨大で、プロペラだけで空を飛ぶ飛行機、当時ではまさに想像上だけの夢のような乗り物だったのではないでしょうか。
空気より重いものが空を飛ぶこと
作中では、アルバトロス号の生みの親であるロビュールは気球主義者たちの前で気球を批判してみせます。
「空を支配するのは空気より軽いもの(気球)ではなく、空気より重いものだ」と。
「空気より重い」とはつまり、何もしなければ空気中で自然に落下するということ。
気球には空気より軽いガスや、加熱されて空気より軽くなった空気が入っています。よって気球船は「空気より軽い」もので、何もせずとも自然に浮かびがります。
当時の気球主義者たちは「人間は空気より軽いものでしか空を飛べない」と信じていましたが、実は自然界では空を飛ぶほとんどの生物が空気より重いのです。
例えば鳥は空を飛びます。
空気より重いのに、翼を使って空を飛ぶことができるのです。
ロビュールに言わせてみれば「鳥は空を飛ぶのに、空気より軽いものでしか空を飛べないと決めつけるのはおかしい」のです。
そして実際彼は、プロペラだけで空を自由に飛び回るアルバトロス号を造り上げました。
ところで気球船の難点は風の影響を強く受けてしまうことです。
風がある中で気球船を自由に操作することはとても困難だったのです。ロビュールはそういう点で「気球船では空を支配できない」と言ったのですね。
名前の意味
Albatross(アルバトロス)は「アホウドリ」を意味します。
「オウムガイ」を意味するノーチラス号は、その潜水方法がオウムガイに似ていることが名前の由来でした。アルバトロス号もそんな感じなのでしょうか。
アホウドリの飛行について調べてみました。
翼を羽ばたいて飛ぶ力はほかの鳥たちと大差ない。ずば抜けて素晴らしいのは、その滑空力だ。体から突き出た鋭いナイフのように、翼を体に固定し、グライダーを操る操縦士さながらの巧みさで風に乗る。鳥類の多くは風を相手に苦闘するが、アホウドリは風を味方につけることができるのだ。
ロビュールにとっての鳥は「空気よりも重いものが空を飛ぶことの象徴」です。
そんな鳥の中でも特に風に強いのがアホウドリなのです。
「どうしても風に流されてしまう気球船とは違い、この飛行機は風の中でも自由に飛び回ることができる」というロビュールの意思が込められた名前なのかもしれません。
アルバトロス号の模型
原作のアルバトロス号についてはもう良いですね。なんだか歴史の勉強みたいになりそうです。
ここからはネモ船長のアルバトロス号について考えてみましょう。
センター・オブ・ジ・アースのキューラインにはアルバトロス号の模型があります。
ん?これは…気球!?
まさかロビュールがあれほどに批判した気球船なの!?
いや、しかし機体を浮かせるためのプロペラも見られます。
気球船にしては気球が小さすぎますし、まるで気球船とプロペラ船を合体させたような飛行機ですね。
おそらくネモ船長は気球無しで空を飛ぶ研究をしていて、この飛行機はその途中経過なのではないでしょうか。
ところで機体はネモ船長の遊び心なのか、その名の通りアホウドリを模しているようです。
エアポート
この大きい「N」が書かれたサークルはアルバトロス号の離着陸ポイントです。
ここにはアルバトロス号が着陸するときの車輪の跡が見られます。
車輪の跡が付くということは、アルバトロス号にはもちろん車輪が付いていますよね。
また気球があっては勢いよく離着陸しないでしょうから、気球も無いと思われます。
つまり現在ネモ船長が乗り回しているアルバトロス号は、車輪があって、気球が無く、プロペラだけで空を飛び回る飛行機のはずです。
これはまさにロビュールが造った原作通りのアルバトロス号ですね!
ということはネモ船長が現在乗り回している飛行機は、車輪すら付いていないこの模型ではありえませんね。
やはりこれは初期の方の試作品なのでしょう。ネモ船長の研究は既にこの次の段階へ進んでいたのです。
ノーチラスギフトの役割
エアポートのすぐそばにはノーチラスギフトがありますが、そのてっぺんにこんなものが付いています。
公式ブログによると、これはアルバトロス号が着陸の安全確認をするために使う通信アンテナだとか。
最上部についているアンテナは電波探知装置です。ネモ船長専用の飛行機、アルバトロス号の着陸時に安全を確認するために使用されているんですよ。
さらに夜になるとわかるんですが、アンテナの下の部分、これ灯台なんですよね(↓)
最初はノーチラス号を導くための灯台かと思ったんですが、光は岩石に阻まれて外の海には届かないので、一体なんのための灯台なのかと疑問に思っていたのです。 しかし良く考えたら、空からならこの光が見えるんですね。
これはアルバトロス号のための灯台だったのです。
ノーチラスギフトはノーチラス号の修理工場ですが、アンテナと灯台でアルバトロス号を導く役割もあったわけです。
コンセプトアートのアルバトロス号?
こちらはミステリアスアイランドのコンセプトアートのひとつ。
エアポートのところに何やら大きなマシンがあります!
場所的にこれはアルバトロス号ではないでしょうか。
当初はノーチラス号や削岩機と共に、このアルバトロス号も飾られる予定だったに違いありません!
結局造られなかったのは何か事情があるのでしょうか…。残念です…。
例の模型とは明らかに別物ですね。この画像では細かいところが見えないのではっきりとは言えないのですが、気球は付いていないようです。
あと別にアホウドリを模しているわけでもなさそうです。
例の模型は試作品でしたが、これこそが現在ネモ船長が乗り回しているアルバトロス号の完成形なのかもしれません。
ところでネモ船長は今ミステリアスアイランドのどこかにアルバトロス号を停めているはずなんですが、あんなでかいものをどこに隠しているのか不思議です。
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