一昨日7/30(金)、公式ブログから面白い記事が投稿されました。
最近の公式ブログはこういうバックストーリー系の記事も多めに投稿してくれるようになってきているので嬉しいですね。
この記事ではミステリアスアイランドのバックストーリーが紹介されています。
この記事内で個人的に気になる記述があったので、ここでお話しさせていただこうかなと思います。
気になったのは以下の部分。
ノーチラス号は人類の科学を超越した特殊な自家発電によって推進力を得ているんですよ。
これが本当なら、ノーチラス号は電気で動いてることになりますよね?
これが実は結構重要なことなんです!
というのも、ノーチラス号って「電気の力で動いているのか(電気モーター説)」、「蒸気機関によって動いているのか(蒸気機関説)」、実ははっきり判っていないんですよね。

当ブログでは前々からこの「ノーチラス号のエンジンどっちやねん問題」について何度か触れてきたのですが、この問題についてまだちゃんとまとめた記事が無かったので、この機会に書いちゃおうと思います。

細か!別にどっちでも良くない?
なぜ説が2つもあるのか
そもそもなんで「電気モーター説」と「蒸気機関説」の2つが出てきてしまっているのでしょうか。
それは、東京版ノーチラス号のモデルが複数あって、それらがごちゃ混ぜになっちゃってるからなんです。
以下にいろんなノーチラス号の派生を示します。

このように、ノーチラス号という潜水艦は、元々はジュールベルヌの作品『海底二万里』に登場した潜水艦であって、最初はディズニーは全く関係なかったんですね。船体も「葉巻型」と呼ばれる単純な形でした。それをディズニーが映像化して初めて、私たちがよく知るあのサメっぽい形になったわけです。
エンジンの話に戻りましょう。
小説版のエンジン
小説版ノーチラス号の動力については、ネモ船長が以下のように述べています。
強力でかつ意のままに扱え、迅速にして手軽な、あらゆる用途にかなう、ある動力があります。わたしの船を動かしているのはその動力です。(中略)その動力とは、つまり、電気なのです。
ジュール・ヴェルヌ『海底二万里』(岩波文庫, 朝比奈美知子 訳)
全てのオリジナルである小説版のノーチラス号は、ナトリウム電池によって電力が供給されています。これはブンゼン電池の亜鉛をナトリウムに置き換えたもので、従来の亜鉛を用いる場合の2倍の電力を発電できると述べられています。
ここで消費されるナトリウムは海水から抽出されており、そのために必要な熱エネルギーも海底の炭鉱で賄われています。つまり、全て海で完結するようになっているのです。
結論として、小説版ノーチラス号のエネルギー源は電気であり、そうなると動力も電気モーターの類であることがわかります。
ディズニー映画版のエンジン
1954年のディズニー映画『海底二万マイル』では、そこに登場するノーチラス号の動力に関するヒントがいくつか登場します。
- 動力室のシーンでは「科学の夢を超えるエネルギー」「世界に革命を起こせる」といった発言があったり、ラストで大爆発の描写があったりと、エネルギー源として原子力が使われている可能性が示唆されています。
- 劇中のエンジンを観察すると、Walking-Beamエンジン(蒸気機関の一種)が採用されていることがわかります。
よって、ディズニー映画版のノーチラス号は、電気で動く小説版のノーチラス号と異なり、蒸気機関であることがわかります。
ディズニーランドパリ版のエンジン
ディズニーランドパリには、上記の映画版ノーチラス号の外観と内部を詳細に再現したアトラクションがあります。
このノーチラス号周辺には船の詳細を記した艦内図が設置されていて、これによると、ノーチラス号の内部には「蒸気を作り出す装置」と、蒸気機関の一つである「Walking-Beamエンジン」が存在していることがわかります。

結論として、ディズニーランド・パリ版のノーチラス号は、映画版とほぼ同じ動力設定(蒸気機関)であることがわかります。
東京版のエンジン
という過程を踏んで、最終的にディズニーシーにノーチラス号が誕生したわけですが、この東京版ノーチラス号のエンジンについては何も判っていないのが現状なんです。
パリ版みたいに艦内図とか設置してくれてたら良かったんですけどね…。
現状をまとめると以下のような感じ。
エネルギー源 | エンジン | |
---|---|---|
小説版 | ナトリウム電池 | 電気モーター |
ディズニー映画版 | 原子力 | 蒸気機関 |
ディズニーパリ版 | 原子力 | 蒸気機関 |
ディズニー東京版 | ナトリウム電池 or 原子力 | 蒸気機関 or 電気モーター |
東京版だけはエネルギー源もエンジンも全然判らないという感じです。
各文献の解釈
ぶっちゃけこの問題の正解は、ミステリアスアイランドに携わったイマジニアのみぞ知る、という感じなのですが、いくつかミステリアスアイランドのエンジンについて言及している文献があるので見てみましょう。
(文献というほど大層なものではない)
『海の絵本』の解釈
講談社が2006年に出版した、ディズニーマニアの間ではちょっと有名な本です。ディズニーシーの様々なバックストーリーが語られています。
この本で、ノーチラス号について以下のように語られています。
この船は、海水に含まれる塩化ナトリウムを利用して、自力で電力を供給できるという機能をもっているので、半永久的に活動することができる偉大な発明品。
講談社ハートウォームシリーズ (著), ウォルト・ディズニー・ジャパン (著) (2006), 海の絵本(講談社ハートウォームシリーズ), 82.
これは「ナトリウム電池」&「電気モーター」の構成で、完全に小説版ノーチラス号と同様の仕組みです。
映画版&パリ版ノーチラス号と同様のデザインをしていながら、エンジン周りだけは小説版に倣っていることになります。
ミステリアスアイランドは「ジュールベルヌの物語を元にした」的なコンセプトだったので、ジュールベルヌのノーチラス号をリスペクトするなら、これもあり得るかもしれません。
公式ブログの解釈
これが冒頭で説明した内容になるのですが、公式ブログもノーチラス号のエンジンについて触れてくれました。
ノーチラス号は人類の科学を超越した特殊な自家発電によって推進力を得ているんですよ。
https://www.tokyodisneyresort.jp/tdrblog/detail/210730
これによると、エンジンについては電気モーターということになってしまい、やはり映画版&パリ版ノーチラス号とは異なる仕組みです。
「人類の科学を超越した特殊な自家発電」が気になりますが、ナトリウム電池か原子力のどちらかを指している気がします。
個人的に思うこと
というのが今の現状になります。公式ブログなどをみる限りは東京版ノーチラス号は「電気モーター説」が有利でしょうか。
ちなみに私はずっと、東京版ノーチラス号についても「蒸気機関説」を推してます。
船のデザインは全く一緒なのに、エンジンだけは違うっていうのがどうも腑に落ちないんですよね…。
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